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大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)7338号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕原告は、本件事故当時自動車の修理販売を営業目的とする片山自動車工業株式会社および宅地建物取引業を営業目的とする片山土地興業株式会社の各代表取締役としてその経営の任に当り、金融機関ないし取引先との折衝等の職務を行い、その役員報酬として前者の会社から一箇月金二〇〇、〇〇〇円、後者の会社から一箇月金一〇〇、〇〇〇円の各支給を受けていたが、本件事故による受傷のため、本件事故の翌日から昭和四五年三月まで右各会社に出社せず、その間事故の翌日から昭和四二年一二月中旬まで六箇月分の役員報酬金一、八〇〇、〇〇〇円についてはその受給を辞退していたことが認められる。

ところで、会社とその取締役との法律関係は、委任、もしくは準委任であり、また、取締役の受くべき報酬額は、定款もしくは株主総会の決議により定められるものであるから、取締役たる者が交通事故のため出社して労務を提供することができなかつたとしても、取締役の地位にある以上、取締役としての責任を免れ得るものではないのであるから、従来から与えられて来ていた報酬請求権も、株主総会の決議があつた場合等は格別、これを喪失することのないことはいうまでもないことである。しかしながら、取締役において交通事故のため出社して労務を提供することができなかつたことに伴い遂行できなかつた職務の割合に応じた役員報酬額にかぎつては、これを会社から受給することを自ら辞退したうえ、加害者に対し自己の被つた損害として請求することは許されるといつて差し支えないであろう。

そこで、これを原告の場合について考察してみると、証人片山敬の証言および原告本人尋問の結果によれば、原告は、その経営にかかる前記両会社の運営に対しては、自己個人の有する信用をもつて貢献している傾向が強かつたことが認められるうえ、さらに、同証人の証言によれば、前記片山自動車工業については、古くから次男敬が取締役として原告を補佐していたことが認められるから、原告においてたとえ病床にあつたとしても、入院治療中の病状の重篤であつた一時は事の情質上別として、必要な場合には右敬に指示して会社の運営を行うこともあながち不可能であつたとは考えられないし、また、原告本人尋問の結果によれば、原告は、前記通院治療中は、自宅にあつて前記各会社の事務処理につき決済を行うこともあつたことが窺われ、これに原告の前認定病状の程度等をあわせ考えると、原告において本件事故による受傷のため出社して労務の提供ができなかつたことに伴い遂行不可能となつた職務の割合は、入院中の二箇月間につき三分の二、退院後温泉療養を終つたころまでの二箇月間につき二分の一、その後二箇月間につき三分の一程度と認めることができる。そうとすれば、原告において支給を辞退していた前認定金一、八〇〇、〇〇〇円の役員報酬のうち金九〇〇、〇〇〇円については、これを本件事故により原告自身が被るに至つた損害として被告に対し賠償を求めることが許されるというべきである。 (小酒礼)

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